人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

螺旋の上のカタツムリ

tokinoyaka.exblog.jp

この世のあることないこと、自由気ままに

「エデンの東」再考その2

昨夜の「エデンの東」、残念なことに吹き替え。
ジェームズ・ディーンが弟キャル役
リチャード・ダバロスが双子の兄アーロン役

たまたま、チャンネルを切り替えた場面が、
キャルが父親にお金をプレゼントする、あの有名な場面。
横にいた娘が「この人どこかで見た顔」ですって。
名前は知らなくても日本人の多くは彼の顔を見知っている。
すごいことですね。。

吹き替えなので見る気が失せたので、数年前観た記憶を手繰り寄せて
どこに「違和感」を感じたか書いてみたい。

「感動のラスト」に私は引いてしまった。
待ってよ、ズタズタに傷ついたお兄さんの魂は誰が救うの!
これが正直な感情。

あなたたちはいいわよ、そうして、親子の信頼を取り戻せて恋人も手に入れて。
列車のの窓に頭を打ち付け、血みどろで狂い泣きして戦地に行った
アーロンの慟哭の深淵。
この映画で一番傷ついたのは従順で正しきアーロン。
エゴむき出しで生きてきた者に喰われた感じがする。

ラストの3人は誰もが「エゴ」の塊である。
反省して家を出ていくと言いながら父親に介護を頼まれると
「ぼく、お父さんに面倒を見てくれと言われた、うれしい・・幸せ」
とばかりにキャル
「愛されないことが一番不幸なことなんです、どうぞ、キャルになにか頼んであげて」
と元恋人のアーロンの悲痛な哀しみを忘れたかのようなアブラ
従順で素直なアーロンは自分にとって都合がよく、
さみしい思いで問題ばかり起こすキャルに、「愛」を与えることのなかった父親アダン。
今までのアーロンとは別人になったアーロンの狂気を見て、父親は倒れる。
それは、子供を思う愛からではなく、理想としていた息子の変わりように
理想の息子という勲章を失ったショックに見える。
その、アダンはキャルの耳元でささやく
「おまえがわしの面倒を見てくれ・・」
兄の恋人だったアブラの愛をかちとったキャルと、父アダン、そして、アブラ。

こうしてみると、やはりひどい話ではないですか・・(?_?)
でも、家族間、社会間でも多かれ少なかれこういうことが起きているのが事実でしょうけど・・

ラストに行くまでの、それぞれの痛みや悲哀、不条理、
アーロンの微妙な変化が巧みに描かれているのに、
このラストのハッピーエンドぶりはどう見ても違和感。
どうみてもすっきりしないのである。
アメリカという土壌で認められるには、最後はこうしなければならなかったのか、とか
このラストを監督自身が単純に「よし」としているのなら期待外れだし・・

レビューを探しても批判的なものは見つからないし、私がおかしいのかしらと思っていた。
でも、旧約を読んでみると、時として人のエゴのほうが勝ってくることが判る。
もちろん、神のエゴも・・

余談になるが、古い本で、ユングの書いた「ヨブへの答え」という本。
これは神のエゴが説かれている。
20何年も前にまだ、いろいろと悩みが尽きなくて、教会の書店で手にした本。
当時は読めていたのに、今はもう読めません、難しすぎて。。

エリア・カザンはこの「エゴ」を描きたかったのではないだろうか、と
今は思っている。
「エゴ」とは残酷なものである。
人はやはり自分のことが一番かわいい。
親子であっても恋人であっても、ほんの一握りのことしか理解できてない筈である。
人の心はいくらでも深い。

理解されたいという思いが、悲劇や哀しみを創りだしているようにも思える。
そんな簡単に人の心は解らないんですよ、だから、触れ合うご縁を
大切にしようという気持ちになれたらいいんですけどね(^_^.)

深いものを持っていても、氷のように水に浮かんだ小さき塊しか見えない。
その見えたものの下に大きな塊(魂)があり、そのことをないがしろにすれば
私たちは弱きものを傷つけていくことになるのかもしれない。

生きている以上、傷つかないわけにはいかない。
だって、神がその苦しみから解放されないように、
カインを殺す者がないようにしたのですから(涙)
ただ、希望もある。
神はアベルの(善人の弟)血をカインの子供に継承させたとあるので。。。
私たちにはどうしようもない闇もあるけれど、
希望の善の血もちゃんとある、ってよかった。

それにしても、「エデンの東」のアダン父さん、
「正しい行いが私への良きプレゼント」などと子供をしばってしまうのは
そろそろ、やめにしませんか・・なんて。


「カインとアベル」アベルの死に嘆き悲しむアダムとイヴ↓
なんか、親として胸に迫る絵ですね・・
「エデンの東」再考その2_f0253169_15365872.jpg

 

最後にもう一つ余談
タロットでこの映画を表すと「ソードの9」逆位置かしら・・・
「誰か弱いものが必ず傷つく」
あっ、占いでこのカードが出たからと言って無用に心配しないでくださいね。
これ一枚で読むということは通常なく、
一緒に出した他のカードで意味合いが変わってくるので。


by tokinoyakata | 2013-08-24 16:07 | 映画・ドラマ

by ウズメ